嫌われ夫は諦めない



(あ、リコの実がもう少ないな……)

 イヴァーノも元気を取り戻しつつあるが、リコの実をすりつぶして固めたものなら熱があっても食べることができる。なるべくきらさないようにしているけれど、ずいぶん少なくなっている。

 ここからリコの実のなる木までは、歩けば二刻ほどかかる。今から出ていけば、夕刻までには帰ることができそうだ。

 心配しないように執事に声をかけると、リディオにも伝えておくようにと言われる。庭にいる彼は、今は鍛錬をしているようだ。筋力が落ちないようにと毎日続けている。

(ホラ、やっぱり騎士団に戻れるように準備をしているじゃない)

 上半身裸になって剣を振っている。筋肉の隆起が見える肌に汗が流れ落ちて光っている。集中しているのか、動きに無駄がなく剣が空気を切る音が聞こえてきた。

 見ていると、どうしてもずっと見続けていたくなる。身近に若い男性などいなかったから、珍しいだけだと思うのに目が離せない。

 ふと、動きを止めたリディオがシャスナを見つけると、白い歯を見せて快活に笑った。

「おい! シャスナ、そんなところに立ってないで、こっちに来いよ!」

 大きく手を振る彼の顔が眩しくて、思わず目を細めてしまう。どうして、そんなに大きな声で名前を呼んでくれるのだろう。愛し合うことも、仲の良い夫婦になることなど出来ないと、何度も伝えているのにリディオは諦めないでシャスナの名前を呼ぶ。

(なんだろう、苦しい……)

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