嫌われ夫は諦めない
どれだけ寂しくても日は過ぎていく。季節は冬に向かおうとしているから、今のうちに仕込んでおくべき仕事がたくさんあった。冬になると雪で閉ざされるため、今のうちに食料などを貯蔵しておきたい。
イヴァーノも寒さに弱い。なんでも母のアリアが出て行った理由の一つが、冬の寒さと雪であったという。
「お父様、窓を開けておきますね」
「あぁ……」
「食事は食べられそうですか? 温かいスープにしますか?」
「あぁ……」
覇気のない父を見ると、儚くなってしまいそうで怖くなる。リディオが出て行ってから今日で一カ月になるが、やはりと言うべきか彼は帰ってこなかった。
冷たい寝台に時折涙を流したが、それももう慣れてしまった。彼から贈られたドレスも下着も、目につかないように箱に入れてある。いつか、思い出になった時に開けて懐かしく想えばいい。
傷ついたこころのかさぶたを取らないように、リディオの名前を誰も出さないでいる。皆、彼がいなくなって寂しくなっている。あれだけ騒がしい人が嵐のようにやってきて、去っていった。
普段通りの生活に戻るだけなのに、それが酷く難しい。シャスナは敢えてイヴァーノには明るく振る舞っていると、執事が扉をノックした。
「シャスナ様、お客様が来られたようです」
「お客様? 誰かしら?」
玄関に向かうとそこには、王都から派遣されたという医師が一人、往診鞄を持って立っていた。