嫌われ夫は諦めない
「そんなっ、どうして?」
急いで窓を開けると、シャスナの名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
「うそっ、リディオ! どうして帰って来るの?」
「シャスナ―!」
馬上で大きく手を振っている。嬉しそうに顔をほころばせ、急いで来たのか馬の息が荒い。
いてもたってもいられず、シャスナは階下に降りると玄関を開けた。すると馬から降りていたリディオは、シャスナの身体を全身を使って抱きしめた。
「シャスナ、待たせてすまなかった。王宮の補佐官どもがうるさかったから、時間がかかっちまった」
「リディオ、どうして戻ってきたの?」
「どうしてって、俺はお前の夫だろう。帰って来るのはお前のところに決まっている」
「もう、もう帰ってこないと思ってた」
シャスナはリディオの頬を両手で挟み込むと、無精ひげが手に当たりチクチクする。どうやら夜通し馬を駆けて来たようだ。
「リディオ……、私」
瞳を涙で潤わせ、シャスナは彼の唇に自分の唇を重ねる。何といっていいのかわからず、咄嗟に口づけていた。
「おい、シャスナ。俺を見るんだ」
「うん」
「俺と、愛し愛される夫婦になってくれるか? 俺はお前のことを愛している。もう、初めて会った時からシャスナのことで頭がいっぱいになったんだ。このまま、俺と一緒に本物の夫婦になってくれ」
「うん」
「本物の……、愛しあうんだぞ? いいのか?」
「うん、うん」
もう目の前は涙で揺らいでいる。リディオが戻ってきてくれた、そのことだけで胸がいっぱいなのに、もう一度夫婦として愛し合いたいと言ってくれた。
「私も、リディオのことが好きなの。やっと、わかったの。遅くなって、ごめんなさい。私も、あなたと愛し合う夫婦になりたい……!」
「シャスナ!」
シャスナの顎を持ち上げたリディオは唇を塞いだ。食むように何度も唇を合わせると、お互いに相手のことしか考えることができなくなる。最後にシャスナを横抱きしたリディオは、二階へと足を向けた。