嫌われ夫は諦めない


「閣下、これは王妃からの手紙です。中身は……、ご自身でお確かめください」
「リディオ君、戻って来てくれてありがとう。私も嬉しいよ」
「はい、私もこれからは気を引き締めて妻のシャスナを愛します」
「はは、君の本気なんて恐ろしいね。侯爵位も、領地もシャスナも君に任せるよ。僕は……、シャスナの子どもが見られるまでは頑張らないとね」
「お気遣いの程、ありがとうございます」

 王妃の手紙をしっかりと握りしめたイヴァーノをそのままにして、部屋を出るとシャスナが心配そうな顔をして立っている。

「大丈夫だ、話は終わった」
「……、ありがとう。貴方がいてくれて、本当に助かったわ。お父様はどう?」
「今は一人にしておこう。王妃から手紙を預かってきたんだ。多分、謝罪だと思うが二人には二人の関係があるのだろう」
「王妃様からの謝罪文だなんて……、貴族手当も貰ったのに恐れ多いわ」
「何言っているんだ、シャスナは苦労してきたんだからこのくらい当り前だ。これで閣下の憂いが少しでもなくなればいいけどな。そうすれば、病気も快復するかもしれない」
「そうだといいのだけど」

 俯きそうになるシャスナの顎を持ち、顔を上げさせる。

「シャスナ、俺を見るんだ。君に恋して、狂っている男の目だ」
「ふ、ふふ。そんな言い方する男の人、初めて聞いたわ」
「他の男が君を口説くなら、俺の剣の餌食となってもらうけどな」

 これから王都で開く予定の結婚式のことも決めなくてはいけない。王都に行くことも増えるだろうから、シャスナ用の馬車を用意して、新しく下働きや召使も雇いたい。なによりもシャスナの手がこれ以上痛まないようにしたい。

 王都で購入した最新のドレスに宝飾品と化粧品、それらで着飾ったシャスナを早く見てみたい。

「君を連れて、王都に一度行きたい。大丈夫だ、君の不名誉な噂はもうないから安心して欲しい」

 女の嫉妬が生み出した醜い噂話は、既に払拭されている。何よりもシャスナの可憐な姿を見れば、吹き飛んでしまうだろう。

「それは……、ちょっと難しいかもしれない」
「何か不安なことがあるのか?」
「ええと、うん。あの……」
「シャスナ、大丈夫だ。俺がついている」
「あ、その。実はね……」

 
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