片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
まさに釘付け状態。異性に対してこのような感覚に陥るのは、生まれて初めてのことだった。それもあって、二人きりになるとついぎこちなくなってしまう。もともと極端に恋愛経験が少ない私は、二十九歳にもなっても男性と話すことに慣れていないのだ。
せっかくだから何か話したほうが良いだろう。話題になるものを探して視線を彷徨わせていると、伊織さんがこちらを見た。
「少し、気が紛れましたか?」
「え?」
「先ほどは随分緊張されてたようなので、外の空気を吸ったほうが良いかと思いまして。逆に緊張させてしまっていたら申し訳ない」
「そんな……お気遣いありがとうございます」
やはり緊張は、彼にも伝わってしまっていたのだ。
気を使わせてしまったことに反省していると、伊織さんが緩やかに歩みを止めた。
「それで、簡潔に話しますが……今回の縁談は断ってもらっても構わないので」
「……と、言いますと」
「親同士の関係性を考えれば断りづらいと思います。ですが、あくまでプライベートなことなので、緋真さんが気を使う必要はないと先に伝えておきたくて」
伊織さんとしては、どういう気持ちなのだろうか。
そもそも自由恋愛が当たり前の今の時代に、お見合い結婚は珍しいのだ。こうして改めて伝えてくるということは、私に断って欲しいのかもしれない。
彼はきっと引く手あまただろうし、わざわざ私と結婚するメリットはない、か。
第一印象こそ惹かれるものがあったせいか、多少なりともショックを受けている自分に気付いて苦笑する。
どう答えるべきかわからず黙りこくっていると、私の返答の前に彼が言葉を重ねた。
「ただ、俺としては受けたいと思ってます。もし緋真さんがまた会いたいと思ってくれるのなら、嬉しいです」
「っ、本気で仰ってますか……?」
「嘘をつく必要が?」
せっかくだから何か話したほうが良いだろう。話題になるものを探して視線を彷徨わせていると、伊織さんがこちらを見た。
「少し、気が紛れましたか?」
「え?」
「先ほどは随分緊張されてたようなので、外の空気を吸ったほうが良いかと思いまして。逆に緊張させてしまっていたら申し訳ない」
「そんな……お気遣いありがとうございます」
やはり緊張は、彼にも伝わってしまっていたのだ。
気を使わせてしまったことに反省していると、伊織さんが緩やかに歩みを止めた。
「それで、簡潔に話しますが……今回の縁談は断ってもらっても構わないので」
「……と、言いますと」
「親同士の関係性を考えれば断りづらいと思います。ですが、あくまでプライベートなことなので、緋真さんが気を使う必要はないと先に伝えておきたくて」
伊織さんとしては、どういう気持ちなのだろうか。
そもそも自由恋愛が当たり前の今の時代に、お見合い結婚は珍しいのだ。こうして改めて伝えてくるということは、私に断って欲しいのかもしれない。
彼はきっと引く手あまただろうし、わざわざ私と結婚するメリットはない、か。
第一印象こそ惹かれるものがあったせいか、多少なりともショックを受けている自分に気付いて苦笑する。
どう答えるべきかわからず黙りこくっていると、私の返答の前に彼が言葉を重ねた。
「ただ、俺としては受けたいと思ってます。もし緋真さんがまた会いたいと思ってくれるのなら、嬉しいです」
「っ、本気で仰ってますか……?」
「嘘をつく必要が?」