BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
元々致死率の高い病気だけに、俺の責任問題にはならなかったが、完全に打ちのめされてしまった。
もしかしたら、助けることが出来たかもしれない命。
奏太の死が俺の医師としての生き方を変えた。

奏太の死後、俺は軽い鬱状態になった。
食べられなくなり、眠れなくなった。
追い打ちをかけるように、奏太の保護者が病院にカルテの開示を求めてきた。
カルテを調べられても何も後ろめたいことはない。
でも、まだ25歳の俺には辛かった。

奏太の父親は30歳の教師。
母親は25歳。
「なぜあんなに元気だった奏太が突然死ななくてはならなかったのか」
「医療ミスがあったのではないか」
何度も何度も問い詰められた。
父親やその両親の怒りは、俺ばかりではなく憔悴しきった母親にまで向けられた。
「母親がちゃんと見ていて、早く気付けば死ななかったんじゃないのか」
と、追い詰めた。

最終的には訴訟には至らなかったが、和解までの半年は今でも忘れることが出来ない。
これが俺の初めての挫折であり、小児科医としての原点。
そして、奏太の母親が・・・・宝だった。

こんな出会いをした以上、俺たちに未来はないんだ。
< 9 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop