冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
その時、奥で神獣たちを誘導している者たちがざわついた。

ミリアは、続いてカイたちの間にも緊張が走ったことに気付かなかった。

「ふふっ、私の顔、舐めても美味しくないよ」

「わん! わふっ」

神獣との触れ合いに夢中になっていると、後ろから影が差した。ハタと動きを止めた時、ミリアと神獣の間に大きな手が差し入れられて阻止された。

「――何、舐められているんだ」

聞き覚えがある声に「ん?」と思った。

まさか、と思って肩越しに見上げてみると、そこにはアンドレアがいた。

「え。……なんで?」

驚きすぎて言葉を続けられなかった。

するとアンドレアは、どこか不満そうな顔でマントを払ってしゃがむ。

「離宮に行ったら、出たというので」

顔を覗き込まれて、ミリアは自然と後ろへ寄った。こうしていると立っている時と違い、互いの顔がよく見える距離感も慣れなかった。

(この人、昨日やらかしたあとなのにまた離宮に来たの? なんで?)

ミリアはわけが分からなかった。

すると彼が、膝の上で呑気そうにお座りしていた神獣を両手で持ち上げた。

「あっ、何するんですか」

「もう終わったんだろう。間にいられると邪魔だ」

なんの、と尋ねようとした時、神獣をそばに置いたアンドレアに距離を詰められて、顎を掴まれた。

近付いた彼の顔とミリアの顔の影が、重なる。

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