冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
彼の指先が舌に少し触れて、胸の鼓動が一層速まった。

なぜ、口に指を入れられているのか分からない。ミリアはアイスブルーの目を見開き、疑問腑いっぱいに彼を見つめた。

声を出そうとしたら、開いた口へ彼の親指がさらに押し込まれる。

「ふぁっ?」

くちゅりと舌を押されて困惑する。口を開けたままなのがつらかったのだが、指の腹で舌を左右に撫でられてぞわりとした。

意味も分からないのにどきどきして熱くなって、頭がこんがらがった。

すると、アンドレアが顔を寄せてきた。

「殿下っ――」

カイたちが、ぎょっとして立ち上がりかける。

その時、鼻先が触れそうになった距離でアンドレアが止まった。ハタとしたように指をミリアの口からどける。

「……今、何を教えられそうになったか分かったか? もしくは俺がしようとしたこと」

「え? 何か意味があったんですか?」

混乱したまま尋ね返すと、彼が顔をそむけた。自己嫌悪するみたいに眉を寄せたが、やがてほっと息をもらす。

「良かった」

いや、何も良くないとミリアは思った。

神獣に張り合うみたいに舐めてきたのも、わけが分からない。意味もなく舌に触られたのも妙にどぎまぎした。

急に人の口の中に指を入れるなんて、どういう教育を受けているのか。

ようやく顎から手を離されたミリアは、触れられた温もりが残る唇をちょっとこすった。

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