冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
思えばミリアは、視線と同時に顔を上げた。それで、アンドレアの指がうっかり口に入ったのかもしれない。

そういうことなら少し恥ずかしいだろう、とミリアは勘ぐった。

(そのあと、そのまま押し込むのはどうかと思うけどね!)

パニックになって思考が止まったにしても、さすがに口の中を触られるのはミリアも恥ずかしいので勘弁して欲しい。

そもそも、話しがしたいと言われても困る。

身代わりなので、あまり交流は取りたくないと考えていた矢先だ。

「それで、話したいことってなんでしょうか?」

ひとまず、できるだけ早く済ませることにして尋ねた。

アンドレアが片膝を立て、それに腕を乗せてじっとミリアを見つめてきた。

「……君の正体を知っている、と言ったら?」

「は」

聞き間違いかなと考える時間を置いた。

「ひぇえええええ!?」

そのコンマ二秒後、ミリアは思わず悲鳴を上げた。

するとアンドレアが察したみたいにすぐ目元の強さをとくと、素早く「落ち着け」と言ってきた。

「正体というのは、――そう、君が木登りも好きな女の子だということだ」

「へ?」

「昔、この国に来ていた時のことを思い出したんだ」

「む、むかし……」

「そう、君と何か話しがしたいと思ってここに移動したんだが、この木を見て思い出した。帰る前に城の木に登っていただろう? あれは君だよな?」

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