冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
アンドレアがびっくりしたように目を見開いている。どうだと思ってふふんと笑って見せると、彼が不自然に視線をそらした。

「そ、そうか」

彼は顔の下を手で覆ってそう言った。その目元は、少し赤い。

(よしよし、引いてるぞっ)

ミリアは、いい感じで混乱しているのだろうと思った。さすがの軍人な獣人王子も、冷静な対応ができないようだ。

「そうですわ殿下、試しにこの木に登ってもいいですか?」

「今か?」

あのアンドレアが、ぱっと顔を向けてくる。

またしても驚いたのだろう。ミリアは気を良くて、胸を張って頷いて見せた。

「はい。見事、あの木の上の花を取ってきますわ。こう見えて私、重い衣装もへっちゃらですの」

アンドレアが少し考える。

「――いいだろう。落ちたとしても俺が受け止められる、問題はない」

落ちる気はない。

あれから約十年経った。ミリアは、もう子供じゃないのだ。

「それではっ」

自信があったミリアは、早速木へと登った。まずはジャンプして幹を掴み、身体を振って身軽にそこへ着地する。

そして護衛訓練を受けた持ち前の運動能力で、あっという間に木の中腹も登り超えた。

(これくらいの高さなんて、楽勝だもんね)

下にいるアンドレアに顔が見えないのをいいことに、ミリアは唇を舐めた。

城の二階に入るのも朝飯前だし、いい感じの〝踏み場〟さえあれば城壁だって飛び越えられる。
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