冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました

どんどん幹を踏み越え、とうとう一番上に咲いている花まで辿り着いた。

手を伸ばして一つだけ取る。

(よし、成功! あとは、これを持ち帰れば――)

その時、下げた片足がつるっと滑った。

「ほえっ?」

姫仕様の靴には、少々滑りやすい木の種類だった。身体が浮遊感に包まれた一瞬後、まずいと思った時には背中から傾いていた。

「ほ、ほええぇぇぇぇっ!」

嘘でしょと思ったのは、ほんのわずかだ。

ミリアの身体は背中からあっという間に落ちた。下に待機していたアンドレアが両腕で受け止め、そのまま一緒にどさりと芝生に転がった。

ミリアの背中は地面に当たらなかった。

アンドレアがクッションになってくれたからだ。怪我がないようにかき抱いてくれている彼の腕の温もりに、彼女は呆然とした。

(……また、落ちた? 嘘でしょ?)

助かったという気持ちと、当時とまったく同じことをしでかしたショックがぶつかり合って、すぐに動けないでいた。

すると、「くくっ」と笑う声が聞こえて我に返った。

「落ちたな。ふふっ、見事な驚きっぷりだった」

見上げると、すぐそこに楽しそうな彼の顔があった。失敗して落ちてしまっのに、アンドレアは笑ってくれている。

ミリアは胸が温かくなった。けれど冷静さが戻ってくるなり、彼が尻もちをついている姿に慌てた。上体を起こして謝る。

< 124 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop