冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
どんどん幹を踏み越え、とうとう一番上に咲いている花まで辿り着いた。
手を伸ばして一つだけ取る。
(よし、成功! あとは、これを持ち帰れば――)
その時、下げた片足がつるっと滑った。
「ほえっ?」
姫仕様の靴には、少々滑りやすい木の種類だった。身体が浮遊感に包まれた一瞬後、まずいと思った時には背中から傾いていた。
「ほ、ほええぇぇぇぇっ!」
嘘でしょと思ったのは、ほんのわずかだ。
ミリアの身体は背中からあっという間に落ちた。下に待機していたアンドレアが両腕で受け止め、そのまま一緒にどさりと芝生に転がった。
ミリアの背中は地面に当たらなかった。
アンドレアがクッションになってくれたからだ。怪我がないようにかき抱いてくれている彼の腕の温もりに、彼女は呆然とした。
(……また、落ちた? 嘘でしょ?)
助かったという気持ちと、当時とまったく同じことをしでかしたショックがぶつかり合って、すぐに動けないでいた。
すると、「くくっ」と笑う声が聞こえて我に返った。
「落ちたな。ふふっ、見事な驚きっぷりだった」
見上げると、すぐそこに楽しそうな彼の顔があった。失敗して落ちてしまっのに、アンドレアは笑ってくれている。
ミリアは胸が温かくなった。けれど冷静さが戻ってくるなり、彼が尻もちをついている姿に慌てた。上体を起こして謝る。