冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
その指先は、離れる最後の瞬間まで、気遣ってくれているみたいにずっと優しくてどきどきしてしまった。

(どう、しよう。彼は私のこと姫様だと思っているからこんなに優しいの……?)

自然体で笑う彼の顔も、穏やかな眼差しも、どうしてだか彼女の胸を急にそわそわと落ち着かなくさせた。

こんな女性扱いも初めてで、ミリアは恥じらった顔を咄嗟に横に向けた。

「……えっと。ありがとう、ございます……」

胸が無性にどきどきしていた。これ以上顔が熱くなってしまう前に止めないと、と思うのに鼓動は小さく戻ってくれない。

(姫様じゃない私が、嬉しい、だなんて思っちゃだめなのに)

彼が向けた気遣いも全部、コンスタンシアへ向けたものだ。

その時、大きな手で頬に触れられた。それは耳の後ろまでくすぐりながら、ミリアの目を彼へと戻させる。

「殿下……?」

目を戻してみると、なぜか先程よりも彼の顔が近い。

すると手首を掴まれ、腕を回されて背中を引き寄せられた。

一瞬の出来事で思考が追い付かなかった。彼との距離がなくなったと思った時には、ミリアはアンドレアに唇を奪われていた。

柔らかな感触がミリアの唇を撫で、温もりを残してそっと離れていった。

「な、なんでキスなんか」

感触が残る唇に、指先を滑らせた。

「したいと思ったから、した」

そう断言されても困る。

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