冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
優しい声に心臓がばっくんとはねた。そのうえ、彼に見下ろされて心臓がどうにかなってしまそうになる。

「……アン、ドレア様」

それ以上優しい声で、眼差しで、同じことを促されたら変になってしまいそうで名前を呼んだ。

するとアンドレアが、ふっと優しく笑った。

「そうだ。いい子だ」

「ひぇ……っ」

二人の間にかかったプラチナブロンドの髪を撫でられた。

(な、なんでこんなに慣れてるの!)

手に絡めた髪を、彼にじっと見られて緊張してきた。まさか、魔法で色が違うと察知されることはないはずだが。

「ア、アンドレア様? わ、私の髪に何か」

「いや? なんでもないんだ」

彼が、指から髪をこぼれさせた。

「今度からは、そうやって名前を呼んでくれ。いいね?」

また神に触られでもしたらと考えたミリアは、分かりましたと必死に伝えるように素早く数回頷き返していた。

王族の名前を呼んでしまった。

いまだ心臓がばくばくしている。それに、どうしてか『アンドレア』という名前が妙にミリアを挙動不審にさせた。

呼んで、と彼自身に言われたことも胸の鼓動を速めていた。

ミリアは、エスコートするアンドレアを盗み見た。軍服なのだけれど、そうしているとやっぱり王子様なんだなと分かる。

横顔も、エスコートする姿もとても絵になった。

本来は侍女なのに、彼にこうして姫扱いされているのも不思議に感じた。
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