冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
(やっぱり……今はしないけど、ゆくゆくは予定を立てるつもり? 初夜を?)

そんなことを考えた矢先、手を取られて悲鳴が出そうになった。

なんだろうと思って見てみると、アンドレアがエルボットから濡れ布巾をもらって、ミリアの手を甲斐甲斐しく拭った。

「ケーキはつかなかったか?」

「い、いえっ、ついてません、けど……」

その行動にびっくりしていたミリアは、彼の向こうに視線が引っ張られた。エルボットだけでなく、護衛騎士たちもすごい顔をしている。

(目を疑う、という表情だ……)

気になるのは、ジェフリルド国王もエミリオも笑いをこらえていることだ。王妃が席へと戻りながら、一人ずつナプキンを振るって頭を叩いていた。

(それもそれですごい光景なんだけど……あの二人、案外気質が似ていそう)

そんなことを言ったらエミリオに極寒の眼差しを向けられる予感がして、ぶるっと震えた。

「布巾が冷たかったか?」

「いえっ、大丈夫ですっ」

というか、汚れていないので世話はいらない。

ミリアがもう大丈夫ですからと断ると、彼が名残惜しそうに華奢な手を離した。

「そうだ。こちらも食べるといい、ほど良い甘さで緊張もほぐれる」

布巾をエルボットが受け取る。それさえ見ず、アンドレアが円卓から実の形をした焼き菓子を手に取った。

「え、え?」

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