冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
口に焼き菓子を向けられて戸惑う。そうしている間にも、唇のすぐそこまで迫って――。

「はむ」

唇に触れた瞬間、ミリアは口にしていた。

(あっ、たしかにいい甘さですごく美味しい!)

「紅茶はどうだ?」

「いただきます」

緊張後で喉がからからだった。思い出し、つられて両手を伸ばしたら、アンドレアがにっこりと笑ってミリアにティーカップを手渡してくれた。

その笑顔を見て、護衛騎士たちもカイたちもぞっとしていた。

「……これ、幻覚か?」

「……いやご本人様だろ」

「というかあの人、いちおう微笑めるんだな……」

やりとりをする二人以外、全員顔を伏せて笑いを殺していた。ジェフリルド国王なんて、膝の上をばんばん叩いている。

ミリアは、紅茶をこくりと喉に流し込んだ。

さっぱりした味わいを口にしたら、今度はやっぱり甘いものが欲しくなってしまった。

「欲しがってる顔をしてる」

「ふぇ? むぐっ」

ティーカップを取り上げられたかと思ったら、焼き菓子をまたしても口に入れられた。

けれどいったん口にしてしまうと、美味しくてミリアはもぐもぐしてしまう。口に寄せられる分だけ彼女は齧った。

「可愛いな……ほんと、食べてしまいたいくらいだ」

アンドレアが甘く微笑む。

ミリアは、食べ途中の焼き菓子を呑み込めなくなるところだった。

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