冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
護衛騎士たちが「殿下が甘いっ」と語彙力を失って小さく悲鳴を上げ。カイたちの方は達観した目で静かにしていた。

(……この人、ほんとにあの第二王子?)

正面からアンドレアの微笑みを受けたミリアも、信じられないでいた。

アンドレアは蕩けそうな眼差しをしていた。柔らかで、温かくて、とても気持ちがこもっているように見える。

(当初、ほぼ表情筋が変わらなかったイメージがあったんだけど……)

ミリアは胸が高鳴るのを感じた。彼が寄せてきた最後の一口分の焼き菓子も、どうしてか自分から口を開けて入れさせていた。

口に広がる甘さは、先程と変わってとろりとしている気がした。

食べさせた彼の赤い瞳が、もっと穏やかな笑みを浮かべる様子に胸の奥が熱くなる。

「全部食べてくれて、ありがとう」

「い、いえっ、そういえば丸々一個そうさせてすみませんでしたっ」

「いいんだ。ここに、君とこうして一緒に座っているのが夢みたいで」

それを聞いて、ミリアは途端に熱も引いていった。

(胸が、痛い……)

ずきんずきんとしている気がして、握った手を引き寄せた。

もしかして彼は、気に入ったとかそういうレベルではなく、挨拶に訪れたコンスタンシアを一目見て惚れていたのではないだろうか。

(遅れて、恋だと自覚した、とか……)

あり得そうな気がした。

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