冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「いや、なんでも。そもそもさ、殿下が好いているんなら問題にならなくないか?」

はぐらかすように言われたミリアは、胸がずきんっと痛んだ。

「……問題だよ。アンドレア様が好きなのは〝姫様〟だもん」

ミリアは身代わりだ。

本物のコンスタンシアが出てきたら、アンドレアは一瞬で彼女に目を奪われて、もうミリアなんて見ないだろう。

(どうして、こんなにも胸がしくしくするんだろう?)

教えられたまま『アンドレア』と口から出た途端、ミリアは悲しくなった。

コンスタンシアのことが大好きなのに、彼が彼女を見つめている光景を見たくないと思ってしまった。訳が分からないそんな自分が、嫌になった。

「おいおい、そんな顔すんなよ」

「元気出せって」

下を向いたのに、目がうるっとしたのを察知したみたいだ。カイたちが駆け寄ってきて、代わる代わる頭をぐりぐりと撫でた。

雑な撫で方だ。女の子だと思っていないのだろうか。

「私、元気だもん」

ミリアは、勝手に涙が出そうになっている目をこすった。

胸がずきずき痛むなんて、気のせいだ。

アンドレアにされた優しさが嬉しいだとか、木から落ちたのを受け止めた彼の笑顔だとか、花を頭に添えられた光景がいまだに忘れられなくて――その全部を、今のミリアが喜ぶなんていけないのに。

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