冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
とすると、彼の妻に会うには城を訪ねなければならないらしい。輿入れ以来門扉の向こうに出たことがないので悩んだ。

(でも……とりあえずは相談してみよう)

せっかくこうして会えたのだ。ミリアはひとまず、会って話がしてみたいのだとエミリオに打ち明けた。

「私の城に行きたい? いいよ」

(行きたいのではなくて、あなたの妻に用があるんですよ……)

ミリアはそう思った。あっさり意見が通ってしまったことも驚いていると、エミリオが続いて驚愕の一言を発した。

「今から行く?」

「へ……?」

軽くそんな提案が彼の口から出されて、ミリアの思考がいったん停止した。

「おぉ、さすがは予測不能の王太子殿下……」

カイたちが、そんなことを呟いていた。



◇◇◇



王太子専用の馬車に揺られて、一時間半。

ミリアは、護衛騎士として離宮の騎士たちも騎馬で同行する中、王都の街並みの見晴らしもいい、小高い場所に建てられたレンヴィア城に到着した。

カイも同席した車内でのエミリオの話によると、芸術を愛していた大公が、百年前に増改築によって完成させたのだとか。

彼はあらゆる芸術の発展に貢献し、レンヴィア城は現在の王城にも通じる近代的な美しい造形美の一作品としても知られているという。

(たしかに、美しい……けれど)

エミリオの説明を受けつつ立派な玄関扉をくぐったところで、ミリアは首を捻る。

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