冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
気のせいでなければ、一瞬ドスが混じった。戻ってきてシャルスティーヌの目は笑っているのだが、背筋が冷えてミリアは口を閉じる。

「わたくし、嫁ぐ前に、故郷の国で婚約まであと一歩だった婚約者候補との縁談がだめになりましたの。それはお聞きになりまして?」

「あっ、はい」

「それではその実体験と、わたくしが知っているいくつかの案をお話しいたしますわ」

「あ、ありがとうございます……でも、いいんですか?」

「うふふ、自身の体験のこと? いいのですわ、話すことでストレス発散になりますの、陛下への」

シャルスティーヌの笑顔が、氷みたいになった。

(うわぁー、陛下と言い切った……)

ミリアは何も言えなかったし、カイたちも吹雪きの中にいるみたいに寒がっていた。

「わたくし、嘘の婚約話を聞かされたのです」

「ん……?」

「それを知ったわたくしは、あろうことかパーティーの真っ最中だったというのに婚約者候補を蹴り飛ばし、なりふり構わず城を飛び出したのですわ」

「……嘘の婚約話って、誰の?」

「エミリオですわ」

ますます意味が分からなくなってきた。

急に話されたせいかもしれない。だって隣国に届くくらいの婚約話が嘘だなんて、そんなこと起こらないはずだ。

< 172 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop