冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「――よし、ここを出よう」

そのあとどうなるか、というのはあとで考えることにした。

とにかく、まずはここから離れなければならない。

普段の彼の来訪や、王家のティータイムの時と同じく連絡は唐突にされるだろう。もし今日にでも初夜を行われてしまったら、まずい。

キスをされて気付いた。ミリアは、アンドレアの手を拒めない。

彼がうっかりミリアとしか子作りできなくなってしまったら大問題だ。しかし――もし、その時がきたら、彼女は使命よりも彼の言葉に従ってしまう予感がした。

(発情って感化されるのかな……?)

とてもどきどきして、たぶん、彼になら最後まで身を任せてしまうだろう。

任務を忘れてしまうことなるなんて、だめだ。

だから、とにかくここを出ることにした。ミリアは身代わりだ。それが頭から抜けてしまうようなことがあってはならない。

決行時刻は、午前中の侍女たちの仕事が終わってからとした。

正午までの数時間は人の来訪がなくなる。それまでいつも通り過ごしたのち、侍女たちが出ていってまずは外へ耳を澄ませた。

(――ここから離宮出入口まで、彼女たちの足で遅くとも数分では着く)

普段、カイたちのところに走れるタイミングを計っていたのが幸いした。

ミリアは体彼女たちの歩幅と足音から計算し、こちらの様子が完全に察知できなくなるまで待ってから、素早く動き出した。

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