冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
これは至極簡単だ。彼らは離宮の外側に立っていて、その背はアーチ状の入り口の縁にかかっている。

つまり一気に近付き、気付かれる前に〝彼らの視界に残っていなければ〟いいのだ。

(一、二の――)

ミリアは、呼吸を止めて気配を完全に絶つと、足音を最小限に絞って加速した。

目測でカウントし、予定跳躍地で大きくジャンプする。

支柱の飾りを掴み、警備兵たちが守る離宮の塀に登った。さらにもう一段ジャンプして、使用人側通路へと降り立つ。

「……ん? 今、何か来たか?」

「いや? 後ろには誰もいないぞ」

そんな警備の声を聞きながら、侍女たちが使う通路を走った。

歩いたところの王宮の図は、頭に入っている。護衛としては、主人の宿泊先でも逃げるルートなどを真っ先確認するのは当たり前だった。

(門は使えないから、塀を行く)

立ててた計画を頭に思い浮かべながら、ミリアは王宮の正面側を目指した。

通路から飛び出したオレンジ色の髪の少女に驚いて、人々が道を開ける。

これも計画通りだった。一分一秒でも時間を最小限にできるし、目撃されている時間が短いほど服くらいしか印象に残らない。

誰もこんな髪色をした少女など見たことがないので、まさか離宮にいる姫と同一人物だとも思わない。呼び止める人もいないので、彼らが動揺している間にミリアは目的地にどんどん近付ける。

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