冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
目指すのは、城門の右手の高い塀だ。

そうすることで、警備の騎士や門の兵士たちを回避できる。

「なんだなんだっ、女の子が風みたいな速さで走っていくぞ!」

「きゃあっ」

貴婦人が、舞い上がったドレスを押さえる。

(よしっ、外だ!)

ミリアは開いた窓から躍り出た。猫みたいにかいくぐったのを見て、外通路を歩いていた貴族紳士がぎょっとする。

その時、体勢を整え直して走り出した彼女の背に、のんびりとした声がかかった。

「おや、どこかへ散歩かな?」

肩越しに振り返ると、それはエミリオだった。二階の回廊で頬杖をついてミリアを眺めている。

「すみません急いでいるんです、ここを出ようと思って」

「へー。でも門は通れないと思うよ?」

「通るのは門じゃないので大丈夫でーすっ」

どんどん離れていく彼に向って声を張り上げた。

だが、視線を前に戻したところでミリアは「ん?」と首を捻った。

(待って……変装解いたのになんで私だって分かったの!?)

髪色もまったく違うのに、と彼女は困惑した。

まさか後頭部で人を判断できるなんてありえるだろうか。騒がしいのを察知して、エミリオはここに出てくることを見越して待っていた?

(いやいや、そんなはずないでしょ。いたのは偶然だよ)

とりあえず計画を成功させよう。ミリアは目の前に集中した。

「そ、そこのお嬢さん危ないよ! 正面は壁だ!」

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