冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
嬉しいけれど、このことは内緒だ。カイたちは誰もいない時に『ミリア』と呼び、彼女も彼らの前でだけ素でいられる。

ミリアの役目は、コンスタンシアのふりを貫き通して、国交の問題もなく結婚が白紙になり次第この国を出ることだ。

王太子と王妃も、このまま放っておいてくれていい。

そのおかげで何より平和を感じている。社交も完全免除状態を、彼女は美味しい紅茶を飲みながら思ったのだった。



◇◇◇



その、ほぼ同時刻。

「最低だよ」

「ほんとに、最低ね」

そんな辛辣な意見が飛んだのは、王族プライベートハウス園だ。

その言葉を受けているのは、第二王子アンドレアである。

「……開口一番、久し振りの顔合わせでそれはないでしょう。兄上、母上」

精悍な目鼻立ちをした美男子である彼の口元も、さすがにひくつく。黒に近い髪は、太陽の日差しがあたると赤味が見えてラインが入ったようにも見える。

「何度だって言いますよ。わたくしが会うのもだめ、夫であるあなたが会っていないのだから、あなたの兄であるエミリオが会うのも、妙な波を立てる可能性があるからできない――ひどいのではなくて?」

「そうだよ。たった一人で来たのなら心細いと思うよ?」

「お言葉ですが兄上、王族だろうと貴族だろうと、男女問わず案外したたかなものなんですよ」

アンドレアは、ティーカップにも手を付けずふんっと頬杖をつく。

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