冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
呑気な顔で小首を傾げた彼女を見た途端、発言した騎士は言葉を詰まらせたのちに説明を諦めた。カイたちも、仔犬のブラッシングに集中するふりをして目をそらしていた。

(それにしても、翼を持っている狼なんて珍しいなぁ)

ミリアは騎士に交換された次の犬型の神獣の子を、興味津々と眺めながら毛づくろいした。

身体は灰色で、翼部分も羽毛ではなく体毛だ。羊の毛みたいに柔らかい。

「わふっ」

「はいはい、もっとするね」

気持ちよさそう。それでいて、楽しそうに尻尾を振るものだから可愛い。

次第にブラッシングに慣れてきたミリアも、ふんふんふんっと鼻歌混じりに調子よくブラシをした。

「おやおや、楽しいことをしているね」

その時、どこからか声が聞こえた。隣にいるカイも、周りの地べたで同じように座っている騎士達も「ごほっ」とする。

ミリアがきょとんとして目を向けてみると、そこには帽子を被った老人いた。

「はいっ、楽しいです!」

ミリアが元気いっぱいに応えた途端、カイたちは、今度は驚愕したように彼女の方を見た。

「声、まんまなのに気付かないのか……!?」

「待て静かにしろっ」

別の騎士が、同僚の口を手で覆った。カイもごっくんと息を呑み、歩み寄ってきた老人からそれとなく引き離すようにミリアの対応にあたる。

「ひ、姫、仔犬がぶつかってしまったせいでしょう。姿勢を直しませんと」

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