冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ミリアは、なんで声が裏返っているんだろうか思った。

(……あ、そうだった! 私、姫様のふりをしているんだったっ)

思い出して、慌てて姿勢を直す。

友達ができて嬉しくなってしまったせいで、つい気が緩んだのだろう。気を引き締めないと、と心の中で自分に注意する。

「姫? はて、どちら様から来た姫君なのかな?」

老人が、うーんと首を傾げていた。

(あれ? 私のこと知らないみたい? なら、安心かも)

ミリアは、座り姿勢もセーフだったと密かに胸を撫で下ろす。彼は王宮のどこかで働いている〝おじいさん〟なのだろう。

「私も参加していいかな?」

「えっと、係の人たちはどこか行っちゃって……」

「一頭だけ。もふもふが癒しでね、休憩になるからいつも来ているんだ」

「あ、そうだったんですね! 人手がいつも足りないくらいだって聞きましたし、いいと思います!」

ミリアは笑顔で隣を示した。カイたちの顔はドン引いていて、ひそひそと囁き合う。

「とぼけ具合がすごい……」

「というか、ちょろすぎるだろう……」

「やっぱり不安だ。俺らで、どうにかして守ろう」

カイの言葉に、全員が「ああ、そうだな」と決意を固めた。

老人が加わってブラッシングが再開した。彼はミリアが一頭をこなしている間に、ぽんぽんと三頭スムーズにやってしまって彼女は目を輝かせた。

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