冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ふと聞こえた声に我に返った。

最近どこかで聞いたことがあったような気がしたが、やや高く作られた老人風の声に忘れてしまった。

「あっ、いえ、なんでもないんです」

それは〝ミリア〟の話であって〝第一王女コンスタンシア〟の話ではない。

どう言い訳しようかと大急ぎで考えていたら、老人がブラッシングを終えた仔犬をそっと膝から下ろしながら先に言った。

「守りたい事情があって、置いていく者もいるよ。君を助けたかったのかもしれない」

「え……?」

まるで知っているみたいな老人を不思議に思って見つめると、彼もまたミリアを見つめ返してきた。

「君は偉いね」

にこっと笑った口元の雰囲気が、やはり最近見た誰かに似ている気がした。

「偉い、かなぁ」

けれど照れ臭くなって、ミリアは下を向いてはにかんでしまう。

そうしていると十七歳にはとても見えない。庇護欲をそそる愛らしい姿に、カイたちはぐずりだした仔犬を彼女の上からそっとどけてやる。

「ふふふ、たしかにこれは甘やかしたくなっちゃうなぁ。はい、偉い君には飴玉をあげよう」

「わぁっ、とってもきれいな飴玉!」

ころんっと手のひらの上に置かれて、飴玉に意識が持っていかれた。

「いいんですか?」

「ふふふ、私の子供たちは、もう飴玉では喜ばなくなってしまったからね。喜んでもらえたら嬉しいよ。ささ、早速食べてみて」

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