冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
建物がある後ろ側から足音が聞こえてきた。そろそろ時間だと動物課の人がやって来たのだろうか?

そう思って肩越しに目を向けたミリアは、次の瞬間、驚愕に固まった。

そこにいたのは黒に近い髪色をした美しい男だった。日差しに透けると赤味が覗き、毛先に赤いラインが入ったように見える。

切れ長の瞳は、二人の王子が持っているという煌々としたルビー色だ。かなり上のクラスだと分かる上等な軍服とマントもしている。

入国した際に見た姿絵と同じであるし、間違いない。

王宮所属軍司令官の第二王子、アンドレア・ラグウルフだ。

(……ま、まずい)

彼もまた、ミリアと同じく目を見開いた。プラチナブロンドの髪からしても〝離宮に追いやったはずの第一王女コンスタンシア〟だと気付いたのだろう。

カイたちが大慌てで立ち上がり、軍人としての敬礼姿勢を取った。

(姫がこんな格好で子犬の毛づくろいしているとか、あやしすぎるよね!?)

ミリアは、どうしようと思った。

老人が帰ってしまったあと元の姿勢に戻っていた。ドレスのスカートの間に、平気で仔犬を抱え込んだ座り方だ。

「あ、あの……えっと、初めまして?」

長い沈黙が気まずすぎて、ミリアはひとまずそう言った。

アンドレアは、これでもかというくらいに目を丸くして固まった。

(あっ、やばい。姫の言い方として間違ってた!?)

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