冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ミリアは緊張した。何か他にへまをしただろうかと考えて、今の自分の姿勢についてハッと思い出す。

「も、申し訳ございませんっ! このような姿で出迎えてしまい――」

侍女精神で急ぎ立ち上がろうとしたら、上品な動きで手で制されて驚いた。

「構わない。どうか、そのままで」

声は、怖くない気がする。

戸惑いがちにじっと見つめ返したら、アンドレアが左胸に手を添え、やや腰を屈めて目を覗き込んできた。

「俺の方こそ、輿入れがあったというのに顔を見せられず申し訳なかった。少し、忙しくて」

(いや、あなたの場合は不参加したんでしょ……)

とは思ったものの、大人の事情なので黙っておくことにする。

彼が腰を屈めてきたのも、単に怯えさせない配慮があるように感じた。ひとまず普通に話かけてきたことに安心する。

(バレてはいないみたい……というか、意外と優しかったりするのかな?)

ミリアが惑いがちに上目遣いで観察したと同時に、アンドレアが背筋を伸ばしてカイたちを見た。

「お前たちはここで何をしている?」

「えーとっ、姫君がご所望されましたので神獣の子の毛づくろい体験を……」

彼らの空気が一斉にぴりっと引き締まったのを見て、ミリアはびくっとした。

(え、もしかして叱られる? 私が協力させちゃったからっ?)

そんなのだめだ。

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