冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
扉を開けたアンドレアが、ふと振り返ってきた。

「はい、なんでしょう?」

彼が去るという安心感もあったので、ミリアは小首を傾げる。

「次は甘いクッキーを贈ろう」

「……ん?」

やや遅れて理解する様子を、なぜかアンドレアが愉快そうに眺めた。

「それでは、また」

王子様みたいな微笑を残して、彼が出ていく。

残されたミリアは、しばし固まっていたのち「なぜに……?」と呟いてしまったのだった。



◇◇◇



離宮を出たアンドレアが考えていたのは、引き続き彼女のことだった。

父が密かに調べさせた調査書によると、本名は『ミリア』。

第一王女コンスタンシア付きの侍女で、年齢は彼女より一つ年下の十七歳。つまり、二十二歳のアンドレアとは五歳違いだ。

(ふむ。どうやら身代わりがバレるのを恐れているらしいな)

先日、第一王女かと確認してしまった時の過剰反応からも推測していたが、それは当たっていたらしい。

「……責任感が強い、か」

幼い頃に実の両親に捨てられ、生活魔法目当てで拾うところもあるという孤児院でも捨てられ、コンスタンシアに拾われて助けられた。

引き取られたのち、専属侍女となるが、影武者として活躍するだけでなく、護身を学び護衛侍女としても役に立った。

恩を覚えて、一所懸命になる気持ちはアンドレアも分かる。

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