冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
ジェフリルド国王は、そのため今回、強制結婚に踏み出すことにしたと余計なことに〝わざわざ〟手紙に書いていた。

ちょうど、相応しい姫は誰かいないかと考えていたところだったとか――。

「そ、そんな理由でたまたま見た姫様に決めるとか……!」

相手の姫の気持ちなんて、微塵にも考えていない。

ミリアは怒りが込み上げてきた。というか彼は、コンスタンシアがアーサー王子と顔を合わせた際の反応を見ていなかったのだろうか?

「……こんなのひどいっ!」

いや、王家の結婚とはそういうものなのだ。

初恋なんて、結ばれない。思わず感情のまま口にしたミリアは、何も言わないでいるコンスタンシアの様子にハッと気付いた。

見てみると、つい先程まであんなに笑顔でいた彼女は、全てを受け入れる顔でミリアへ静かに微笑み返してきた。

「いいのよ、ミリア」

何も良くない。そうミリアは思って、自分に回ってきたジェフリルド国王からの手紙をくしゃりと握った。

『それが〝姫〟の役割なの。私はいつか、父が提示してきた誰かと結婚するのよ』

まるで自分に覚悟させるように、たびたびそう口にしていたコンスタンシアの姿が脳裏を過ぎっていった。

(――そんなこと、させない)

ミリアを拾って、そばに置いてくれた恩人。

彼女はいつだって、コンスタンシアの笑顔を望んだ。幸せを願った。

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