冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「あ、そうじゃないんです。えと、アンドレア殿下のことを色々と聞いてみたいなぁと思って、散歩がてら歩いていると言いますか」

あわあわと手振りを交えている彼女を、カイたちが「おいおいおい」という感じで見る。もうお前何も喋るな、と彼らの目は失礼にも語っていた。

「アンドレアのこと? それはいいね」

エミリオは、ミリアを見つめたままにこやかに相槌を打った。

「君の夫になった人だものね」

「そ、そうです、はい……」

「父上ではなくて、僕に聞いて正解だったね。あの人にだけは尋ねない方がいいよ」

「……ん?」

疑いもなく親し気に会話を進めてくれた彼の声が、急に背筋が冷える寒々しさをまとったように感じた。

「父上は食えないお人だよ。嘘を平然と交えるし、平気で人を騙すのも王としてどうかなと思うよ。――経験済みだから、よく分かる」

いや、気のせいではない。

あんなに愛想がいいイケメン王子の笑顔が、大変極寒だ。

(いったい、この親子の間に何があったんだろう……)

ミリアはそう思ったものの、怖くて聞けなかった。恐らくは地雷だ。それでも、一つだけ確信できたこともあった。

「……その、溝は」

気になって、怖いもの知りたさにそこだけ確認してみた。

「入ったままだね」

エミリオが作り笑いで、ばっさりと言った。

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