だって君が、好きって言ってくれたから。
「これ、私の? 中学の時なくしたやつ……」
鞄に付けていて、落としてなくしたと思っていた、コスモス柄の小さな鏡のキーホルダー。当時、その柄にはまっていて、ペンケースとか文房具もコスモス柄で揃えていた。
彼はそれを見ていて、覚えていて……。
だから私がコスモス好きなことを?
「これ、拾った時からずっと如月さんに渡さないとって思ってたんだけど、遅くなって、ごめん」
「ごめんも何も……。もう十年ぐらい経ってるのに、よく捨てないでいてくれたね!」
「うん。中学の時に、僕の描いた花の絵を、如月さんが好きって言ってくれて……実はあれから花の絵を描くことに自信が持てたんだ」
えっ? あの何気なく言ったひとことが?
「その言葉を、如月さんが落としたこの鏡に詰め込んで、夢を叶える為のお守りみたいにして持ち歩いていた。ありがとう。そして返すね」
「でも、そんな大切に持ってくれてるなら、そのまま持っててもいいよ?」
「もとは如月さんのだし……」
しばらくそんな会話が繰り返された後、私は言った。
「じゃあ、その鏡、あげます。その代わり、絵を描いている姿、近いうちにまた見せてもらってもいい?」
ちょっと間があったけれど、彼は「うん」と、小さく笑って目を細めた。
「連絡先交換しても、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
私が問うと、彼は答えた。
「いつ描いている姿を見に行ってもいいとか、ある?」
「いつでもいいよ、いつもひとりだし」
「そうなんだ……」
ひとり……その言葉に私はなぜか安堵する。
少し淡い期待をしてしまっているのだろうか。
連絡先を交換すると、また絵を眺める。
「楽しみだな。また絵を描いている姿が見れるの。あの時も、神楽くんの隣で絵を描くの、楽しかったな」
コスモスの絵の前で私は言った。
「そんなふうに思っていてくれたんだ……実は、如月さんが隣で絵を描いてる時は!緊張もしていたけど……居心地がよかった」
「私も居心地よかったよ」
ふたりで、はにかみ笑いをした。
絵のコスモスも、笑ったように見えた。
――私もまた、絵を描こうかな? もちろん、神楽くんの隣で。
鞄に付けていて、落としてなくしたと思っていた、コスモス柄の小さな鏡のキーホルダー。当時、その柄にはまっていて、ペンケースとか文房具もコスモス柄で揃えていた。
彼はそれを見ていて、覚えていて……。
だから私がコスモス好きなことを?
「これ、拾った時からずっと如月さんに渡さないとって思ってたんだけど、遅くなって、ごめん」
「ごめんも何も……。もう十年ぐらい経ってるのに、よく捨てないでいてくれたね!」
「うん。中学の時に、僕の描いた花の絵を、如月さんが好きって言ってくれて……実はあれから花の絵を描くことに自信が持てたんだ」
えっ? あの何気なく言ったひとことが?
「その言葉を、如月さんが落としたこの鏡に詰め込んで、夢を叶える為のお守りみたいにして持ち歩いていた。ありがとう。そして返すね」
「でも、そんな大切に持ってくれてるなら、そのまま持っててもいいよ?」
「もとは如月さんのだし……」
しばらくそんな会話が繰り返された後、私は言った。
「じゃあ、その鏡、あげます。その代わり、絵を描いている姿、近いうちにまた見せてもらってもいい?」
ちょっと間があったけれど、彼は「うん」と、小さく笑って目を細めた。
「連絡先交換しても、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
私が問うと、彼は答えた。
「いつ描いている姿を見に行ってもいいとか、ある?」
「いつでもいいよ、いつもひとりだし」
「そうなんだ……」
ひとり……その言葉に私はなぜか安堵する。
少し淡い期待をしてしまっているのだろうか。
連絡先を交換すると、また絵を眺める。
「楽しみだな。また絵を描いている姿が見れるの。あの時も、神楽くんの隣で絵を描くの、楽しかったな」
コスモスの絵の前で私は言った。
「そんなふうに思っていてくれたんだ……実は、如月さんが隣で絵を描いてる時は!緊張もしていたけど……居心地がよかった」
「私も居心地よかったよ」
ふたりで、はにかみ笑いをした。
絵のコスモスも、笑ったように見えた。
――私もまた、絵を描こうかな? もちろん、神楽くんの隣で。


