冷徹上司の過剰な愛
そのままお母さんの手を握り締めること数時間、お父さんが病室に入ってきた。


数時間ぶりのお父さんの顔色はだいぶ良くて安心する。



「あのんはもう帰りなさい。あとは父さんがいるから心配しなくていい。」


「でも、」


「仕事。明日からちゃんと行くように。母さんも同じこと言うはずだから。」


「………。」


「父さんだけじゃ心配?」


「そんなことないけど…。じゃ明日仕事終わってまた来る。」


「無理しなくていいよ。」


「ううん。電車ですぐだし。」


「…じゃ明日待ってるよ。送ってやれないけど、気をつけて帰るんだぞ。」



病院を出て電車に揺られながら考えるのはなぜか難波さんのこと。


会いたい…。なんてこんな時に思うのは不謹慎なのかな。こんな時だからこそ会いたいって思ってしまう。


時間を確認すると、20時になり掛けていた。


今から難波さんのところ…はさすがに迷惑だよね。と最寄り駅の改札を抜けた時、「あのん…?」と視界に入り込んだ姿。



「っ、…難波、さん…?」



なんで難波さん…。
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