冷徹上司の過剰な愛
「難波さん、ここ座ってください。」



と指定した場所はわたしの前。


水が入ったペットボトルを持ったまま素直にわたしの前にやって来た難波さんを無理矢理座らせるとドライヤーを手にした。



「あのん…?」


「ジッとしてください。髪乾かしますね。」



ドライヤーの電源を入れ、温風を難波さんの髪に当てていく。すると、シャンプーの良い香りが鼻を掠めた。


今、難波さんがどんな顔して、何を考えているのか気になるけど、大人しくしてるところを見れば、これは受け入れてもらえたのかも。


ある程度乾かし終え、ドライヤーの電源を切ると、難波さんが振り向いた。



「ありがとう。気持ち良すぎて寝そうだった。」


「えへへ♪どういたしまして。また乾かすのでいつでも言ってください。」


「じゃまたお願いしようかな。…あ、あのん。」


「はい…?」


「大事をとって明日まで休んでいいよ。有給残ってるよね?」


「有給は残ってますけど、でも仕事溜まってますよね…?」



難波さんも分かってると思うけど、わたしは人一倍容量が悪いから、この溜まった仕事を人並みで片付けられる自信なんてない。


だから、休んでる暇なんてない。
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