冷徹上司の過剰な愛
気づけば声より先に足が動いていた。真っ直ぐ難波さんの元へ向かうと、愛おしい背中に抱きついた。



「っ、あのん?」


「……難波さんのばか。ばかばかばかっ。」


「…どうしたの?え、なんでここに…?」



珍しく慌てた様子の難波さん。



「こんな時間まで誰とどこで何してたの?」


「それはこっちの台詞です!」


「僕は荒牧と「知ってますっ!…知ってる…。」



……あぁ、もおぉ……嫉妬だ。ただの嫉妬。



「……ここからだとあのんの家のほうが近いよね。行ってもいい?」


「…はい。」



散らかり気味だけど、もういいや。多分難波さんもそんなわたしに気づいてる。だから、もういい。


難波さんを家に上げ、テーブルを挟み向かい合う形で座ると、鋭い瞳が向けられた。



「あのん?こんな時間まで何してたの?」


「………ちょっと用事があって。」


「僕に言えない用事?」


「………。」



黙っていたかったなぁ。完璧に料理ができるようになるまで…。そして褒めてほしかったんだけどなぁ。
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