丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
鈴嶺「い、嫌!!!」

咄嗟に振り払い、逃げるように腰を引いた。

志田「大丈夫、大丈夫!
江原より紳士だから!」

鈴嶺「え……江原…さ……」 

志田「鈴嶺ちゃん、言ったよね?
俺は“穢れてる”って。
君の想像つかないことばかりして、人を騙したり、傷つけることで金を稼いでいる。
ダメだよ。
たった一人で俺に会いに来たら……
宝生財閥の愛娘とヤれるなんて、良かったなイナモト」

イナモト「はい」 

鈴嶺「…………本当に、借金…なしにしてくれますか?」

志田「本当に、相手出来るの?」

鈴嶺「………」

志田「名原 知里の時もそうだったけど、君はそんな愚かな奴のために、自分を犠牲に出来るの?」

鈴嶺「私は……私の周りの人達に“できる限り幸せでいてほしい”だけです。
私は、両親や佐木、凱くん達に守られて生きてる。
だから、私が出来ることはしたいんです!」

志田「凱吾くんを、裏切ることになっても?」

鈴嶺「え……」

志田「ここで君がイナモトとヤッたら、凱吾くんは傷つくよ?
…………俺なら……
そんな愚かな奴のために杏が身体を差し出したなんて知ったら、その友達を殺す。
イナモトも、その友達も、関わった奴等全員消す。
君、言ってたよね?
“俺と凱吾くんは似てる”って。
きっと凱吾くんも同じことすると思うよ?
君は、凱吾くんに“そんな残酷なこと”させる気?」

鈴嶺「………」

志田「ね?帰りなよ。
そもそも、俺は君を使って借金をチャラにしようとするような奴の願いを受け入れる気にならない」

鈴嶺「え?」

志田「これでも、鈴嶺ちゃんのことは大事に思ってるんだよ?
杏と鈴嶺ちゃんを使って俺に接触する奴は、一番嫌いだ」

鈴嶺「………」

志田「鈴嶺ちゃん。
鈴嶺ちゃんの“一番大切なモノは何?”」

鈴嶺「え?」

志田「一つだけ、選ぶとしたら」

鈴嶺「一番、大切なモノ…」

志田「俺は“杏”
……………君は?」

鈴嶺「それは……」

志田「凱吾くんだよね?」

鈴嶺「はい」 

志田「だったら、余計にやめな?
そんな愚かな友達のために、凱吾くんを傷つけちゃダメだ」

鈴嶺「………」

志田「凱吾くんと佐木さんと一緒に帰りな」

鈴嶺「え?」


イナモトがドアに向かう。
ドアを開けると、凱吾と佐木が入ってきた。

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