丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
凱吾「鈴嶺!」
佐木「お嬢様!?」

鈴嶺「あ…凱くん…佐木…」

凱吾「大丈夫!?
何かされてない!?」

鈴嶺「ううん…」
ゆっくり首を横に振る。

佐木「お嬢様、部下の方に全て聞きましたよ」

鈴嶺「え……」

凱吾「どうして、一人でこんな汚いところに来たの?」

鈴嶺「お友達の力になりたくて…
でも、力になれなかったけど…
シズエちゃんになんて言おう……」

凱吾「鈴嶺がそこまでする必要ないだろ?
サヤって奴の時のこと、忘れた?」

鈴嶺「………」

佐木「それにお嬢様、相手が志田様でなければ貴女は無事では帰れなかったかもしれないんですよ?」  

鈴嶺「わかってるよ」

凱吾「鈴嶺、帰ろ?」

鈴嶺が頷く。
そして、志田に頭を下げた。

鈴嶺「志田さん、お時間取っていただいてありがとうございました」

志田「ううん、大丈夫だよ!
クラマの娘に伝えてくれる?」

鈴嶺「え?」

志田「鈴嶺ちゃんを使わずに、お前が俺に会いに来い。
話はそれからだって」

鈴嶺「はい、わかりました」

志田「でも、鈴嶺ちゃん。
君の覚悟は受け留めたから。
…………それを、無駄にはしないよ」

鈴嶺「え?」

志田はただ、微笑んでいた。
その笑顔は、鈴嶺の知っているいつも志田の笑顔だった。

帰りの車内――――――

隣に座る凱吾に抱きついている、鈴嶺。

実はかなり怖かったのだ。

凱吾が優しく頭を撫でてくれている。

凱吾「鈴嶺、もうダメだからね?
一人で、あんな汚い所へ行くなんて」

鈴嶺「うん…」
むしろ、出来れば行きたくない。

鈴嶺は、初めて志田の恐ろしさを知ったからだ。

佐木「それにしても、お嬢様は優しすぎます。
そんな愚かな人間のためにこんな……」


そして………その日の夜中。

なかなか寝れない鈴嶺を、凱吾はずっとあやすように頭を撫でていた。

凱吾「鈴嶺、大丈夫。大丈夫だからね……」

鈴嶺「凱くん」

凱吾「ん?」

鈴嶺「私、悪い女だよね…」

凱吾「ん?どこが?
鈴嶺ほど、綺麗な女はいないよ?
心も身体も。
逆に、鈴嶺以外に綺麗な人間がいるの?」

鈴嶺「結局、助けられなかった…」

凱吾「でも、ヤクザに金を借りる人間方が悪いでしょ?
自業自得だよ」

鈴嶺「………」


凱吾「佐木も言ってただろ?
“鈴嶺は優しすぎる”
だから、僕は囲うんだよ?
“鈴嶺が汚されないように”」


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