丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
鈴嶺と利美が会場に戻る。

凱吾と宗匠は、女性達に囲まれていた。
利美は、鈴嶺を見る。

鈴嶺の瞳が、切なく揺れていた。

利美「鈴嶺…様…」

鈴嶺はそのまま俯き、呟いた。

賑やかな会場内。
しかし、利美には聞こえていた。

鈴嶺「大丈夫…凱くんは、私の旦那様。
大丈夫…大丈夫……」
と━━━━━━

そしてバッと顔を上げ、利美に微笑み言った。

鈴嶺「佐々江さん、お庭に出てお散歩しましょ?」



利美「━━━━━大丈夫なんですか?」
スタスタと庭に向かう鈴嶺を追いかけながら言う、利美。

鈴嶺「大丈夫です。佐木には声かけたし、会場はすぐそこですし。
それより、そこのベンチに座りましょ?」

心配そうな利美の手を引き、ベンチに腰かける。

鈴嶺「フフ…宗くんのお話しましょう!
それなら、佐々江さんも楽しいですよね?」

利美「え?あ、はい」

鈴嶺「佐々江さんは、宗くんとはいつお見合いを?」

利美「五年前です!」

鈴嶺「そうなんですね!
その頃から、宗くんを?」

利美「はい。素敵な方だなって!
元々憧れがあって、お見合い相手が不破様って聞いて有頂天になってたんですが……
はっきり断られました(笑)
“人を愛せないから”って。
でもその日、お食事最後まで付き合ってくれて、帰りも送ってくれて、最後まで紳士的に接してくれたんです。
だから、尚更忘れられなくて……」

鈴嶺「そうなんですね!やっぱ、優しいな~」

利美「はい!素敵な方です!」

鈴嶺「ですよね!
だから、ちょっと残念です」

利美「え?」

鈴嶺「“愛情がわからない”ってことです」

利美「そうかな?」

鈴嶺「え?」

利美「今日、鈴嶺様に会って思ったんですが……
不破様はきっと…鈴嶺様のこと好きだと思いますよ?」

鈴嶺「うーん…そうかなぁ~?
私達は、兄妹みたいな感じなので……
お互いに好きですけど、恋愛って感じでは……」

利美「そうなんですか?」

鈴嶺「私達、生まれた時から一緒なので。
物心ついた時には、宗くんが傍にいたんです。
当たり前のように一緒にいて、手を繋ぐことも、頭を撫でられることも当たり前で。
…………でも、ドキドキしないんです」

利美「え?」

鈴嶺「でも、凱くんだと……/////
ただ傍にいるだけで、ドキドキするんです/////」
胸に手を当て、微笑む。

利美「鈴嶺様…/////」

鈴嶺「宗くんにも、そんな幸せあじあわせてあげたいんですが……
…………って…(笑)なんだか、恥ずかしいですね/////」
クスクスと笑う鈴嶺に、利美も微笑むのだった。
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