クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 なにげなく指摘して書類を手渡すと、彼女は素早く自分の前髪を撫でつけた。

 小動物が顔を洗う時の仕草に似ている──と失礼な事を考えてしまう。

『は……恥ずかしいところをお見せして申し訳ありません』

 謝罪する彼女の赤く色づいた顔に、なぜか目を奪われた。

 俺に頭を下げてから青年のもとへ戻り、書類を渡す彼女から目が離せなくなる。

 かわいい人だな、と生まれて初めて他人に対して感じ、そんな自分に動揺した。

 きっと名もよく知らないだろう青年にすぐ手を差し伸べたところも、他人を斬り捨ててばかりの俺には新鮮に映る。

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