囚われのシンデレラ【完結】
「――確かに、結末は辛いものになっちゃった。でもね、やっぱり出会わなければ良かったなんて思えないの。そんなこと私には思えない」
こんなにも苦しいのは、それだけ想いが深いから。それだけ、大切な想いだった。
「知らなかったこと、たくさん知った。嬉しいことも寂しいことも。心から好きな人と過した幸せな時間は消えない。今でも心から言えるよ。西園寺さんを好きになって良かったって。そう思わせてくれた人なの。だから……っ」
柊ちゃんの胸を思いっきり押した。
「大丈夫。ちゃんと前を向く」
西園寺さんがくれた時間、言葉、感情――。
そのすべてが私の中に残っている。それをなかったことにも無駄にもしてはいけない。それは全部、西園寺さんの想いすべてだからだ。
「……俺の、助けはいらないってか」
離れた身体の先から掠れた声が漏れる。
「この苦しみは、私一人で向き合いたい」
誰も西園寺さんの代わりにはなれないのだ。西園寺さんを想う気持ちは私のもの。
”あずさなら、必ず成し遂げられると信じてる。何があってもあずさを応援し続けるよ。あずさのバイオリンのファンだからな”
そう言ってくれた西園寺さんに応えたい。例え、もう私のバイオリンを聴いてくれることはなくても、そう言ってくれた言葉はきっと嘘じゃない。
「柊ちゃん、ごめん――」
柊ちゃんが、離れて行く私を引き留めるみたいにこの手を握りしめている。それを、そっと外した。
「ごめんね、心配かけてばかりの幼馴染で。それと、ありがと」
それだけを伝えて、歩き出す。
苦しみも張り裂けそうな胸の痛みも切なさも、すべてバイオリンの音に込めるから。
”あずさの音が好きなんだ”
そう言ってくれた。
その言葉を裏切らないように。
私にできることは一つだ。