囚われのシンデレラ【完結】


 次の日、ラウンジでの演奏の仕事を終え、コンビニへと向かった。

 いつもと同じ15時からのシフトだ。おにぎりを忙しなく口に放り込んでから、コンビニの制服の上着を着る。そして、レジへと立った。

 少しお客さんの足が途絶えたのを見計らって、在庫チェックなどをする。

「レジ、お願いしまーす」

レジの方から声がかかった。

「はーい」

急いでレジへと回り、「お待たせしました」と言って目の前に立つお客さんと向き合う。

「……あ」
「あ……」

微妙な時間差で、お互いに声を上げていた。現れたのは、前の日にぶつかったあの人――ホテルで鍵を拾ってくれた人だった。
 今、私は店員でこの人はお客さんで。何かを言うべきなのかどうか迷った結果、お礼だけを言うという結論を出した。

「あ、あの、昨日はありがとうございました」
「ここでも、働いてるんだ」
「……あ、はい」

思いもよらず問いが返って来て焦る。

 こうして向き合うと、この人が長身だと知る。私も低い方ではない。160cmくらいはあるけれど、それでも見上げる感じだ。
 昨日会った時よりラフな格好をしている。ジーンズにブルゾンを羽織ったシンプルな出で立ちで、それだけで十分さまになっていた。

「よしたか、これも一緒に買ってくれ――あ、あれ……? この子、昨日の……」

後から現れた人は、多分、昨日ラウンジでこの人と一緒にいた男の人だ。

「――みたいだな」

相変わらず低くてあまり抑揚のない声。

「会計……してくれる?」
「は、はい」

その人の声で、慌ててレジに手を戻す。その間も、後から来た方の人の視線を感じつつ、とにかく早くとそれしか考えられなかった。

「合計3点で、1,100円になります」

スマホでの決済で会計を済ませると、「じゃあ」と短く告げて、その人はスタスタとすぐに立ち去った。

「あっ、ちょっと待て――」

連れの人が慌てて追いかけて行く。その様子をうかがっていると、不意に私の方に振り返った。何か用だろうかと視線を返したが、何かを言うわけでもなくすぐに"よしたかさん"の後を追って行ってしまった。

 まさか、こんなところでまた会うなんて考えてもいなかった。

二日続けて偶然会うなんてことがあるんだ――。

どこか他人事のように思っていたら、次の日、今度はホテルで再び鉢合わせた。

 
< 14 / 365 >

この作品をシェア

pagetop