囚われのシンデレラ【完結】
「私は、西園寺さんの他に付き合っていた人なんていない……っ」
「え……?」
あの日――。
コンビニに斎藤さんが来た、あの雨の日の記憶を懸命に引き寄せる。
”君から離れてやってくれ”
そう言われて、私はそれに頷いて。西園寺さんからもらった鍵を斎藤さんに手渡して――。
その先は?
その先のことは私は何も知らない。その鍵がどうやって西園寺さんの手に渡ったのか。斎藤さんがどんな風に西園寺さんに話をして鍵を返したのか。私は、何も知らない。
あの後、西園寺さんから何の連絡もなかったことで、私が勝手に理解しただけだ。
西園寺さんも自分の置かれている状況を理解して、この別れと縁談を受け入れたんだと――。
そうやって私はこの7年を過ごして来た。
あの、コンチェルトのコンサートがあった日。
もしかして、私が見たのは幻なんかじゃなくて、本当に西園寺さんが来てくれていたのだとしたら……。
でも、どうして私に会わずに帰ってしまったの――?
この7年、私が思い込んでいたことが覆されて、何が本当で何が嘘だったのかぐちゃぐちゃになる。
「他に付き合っていた人って、一体、誰のことを言ってるんですか? どこからそんな話になるんですか」
「私に聞かれたって知らないです。遥人君にそう聞いただけなんだから」
西園寺さんも、この7年、ずっとそう思っていた。私が、西園寺さんを裏切ったんだって。
だから、あんなにも冷たい目を私にする――。
仕方なく別れた哀しい恋じゃない。
西園寺さんにとっては、大切にしていた人に裏切られた思い出したくもない過去――。
「……人は、無防備なところを攻撃された時が一番衝撃が大きい。多分、兄にとってはそういう状況だったんだと思いますよ」
――あいつには駆け引きもない。君には慎重になれなかった。
いつもたくさんの愛情を惜しみなくくれた。疑うことなんて一切なく、ただ私を見てくれていた。
「それなのに、その傷の張本人と一緒に暮らして、毎日顔を合せてるなんて。そんな傷を抉るようなこと、どうしてお兄ちゃんはしてるの……?」
ダメだ。由羅さんに聞いたところでどうにもならない。私が向き合う相手は、西園寺さんと斎藤さんだ。