囚われのシンデレラ【完結】
センチュリーグループ本社ビル。高くそびえ立つそれを下から見上げた。初めて訪れる上に、斎藤さんに会わなければならない。心細さに、負けそうになる。足を踏ん張り、大きく深呼吸をした。
自動ドアをくぐると、高い天井のエントランスが広がる。真っ直ぐに受付へと向かった。
「――すみません。経営企画部の斎藤さんと約束がある進藤と申します。斎藤さんに繋いでいただけますか」
そう伝えると「少々お待ちください」と言われ、すぐに連絡を取ってくれた。
「9階までお越しくださいとのことでした。9階まで上がっていただいたら、そちらでお待ちいただけますか?」
「分かりました。ありがとうございます」
お礼を言ってエレベーターに乗り込む。階数表示をただじっと見上げた。それが9を示し扉が開く。エレベーターの前にホールがあり、長い廊下が続いていた。そこで、言われた通りに待つ。
「――年明けいよいよ西園寺部長も常務か」
聞こえて来た、どこの誰だか分からない会話の中に西園寺さんの名前があって、思わず陰に身を隠してしまう。
「次期社長なんだからそろそろ役員の一人くらいにはなっていないとな」
「来年は、少しほっとできるなー」
「何だよ、それ」
西園寺さんの下で働く人たちだろうか。
「だってさ。あの人、めちゃめちゃ厳しいだろ。表情一つ変えずに厳しいことを言うしさ」
「確かに。御曹司とは思えない有能さではあるけど、血も涙もない。基本、人を信用していないことが分かるから辛いよな。仕事するのに必要以上に緊張すんだよ」
西園寺さんは、本当に変わってしまったのだ。
「……うわっ、やべっ。斎藤さんだ」
潜めていた声が慌ただしくなり、会話をしていた人たちの声が消えた。
「――こんなところにいらしたんですか」
そして、私の目の前に斎藤さんが現れた。
「お待たせいたしました、奥様」
7年前と同じ人なのに、その印象はまるで違った。綺麗な顔立ちの中にある瞳の透明さが、その奥に隠し持つ闇を透けて見せる。すらりとした中性的な容姿と醸し出す冷たさのギャップが、異様な雰囲気を放っていた。
「――こちらへどうぞ」
久しぶりに会うことに対する言葉もない。私も無言でその背中に続く。