囚われのシンデレラ【完結】


 病院で母のリハビリに付き合った後、帰りに買い物をした。アパートの近くの大型スーパーが元日から営業していてくれて助かる。

 アパートに戻って来た頃には空は完全に暗くなっていた。時間はまだ17時を過ぎたばかり。冬は、気付くとすぐに暗くなっている。
 買って来た日用品を押入れにしまい、簡単に部屋を片付けていると、スマホが振動した。

「――もしもし」

着信の相手は西園寺さんだった。

(今、どこ?)
「アパートです。また家を空けることになるから、少し部屋を整えておこうと思って。それから、そちらに戻ろうかと――」
(荷物も多いだろ? これから車で迎えに行く)
「あ、い、いえ、そんなに荷物はないですから。大丈夫ですよ」

電話なのに、つい身振り手振りで会話してしまう。

(俺もどうせ出先だから、迎えに行くよ。1時間もあれば着けると思う。それでいい?)
「……すみません、じゃあ、お願いします」
(着いたら、電話する)

そう言って電話は切れた。それ以上遠慮をするのも不自然な気がして、結局、頷いていた。そうとなったら、早く支度をしなければと動き回る。


 それから30分くらいして、チャイムが鳴った。西園寺さんかとも思ったが、それにしては少し早い。それに、着いたら電話すると言っていた。

「はーい」

この古いアパートにインターホンなどというものはない。

「俺だ」

柊ちゃん――。

ドアノブを握る手が止まる。

「突然、どうしたの?」

ドア越しに問いかける。このドアを開けることに、一瞬躊躇いが生まれる。

「連絡して来たってどうせ会ってくれないだろ。部屋の明かりが早い時間に珍しくついてたから来たんだ。あずさと話がしたい。お願いだ」

ドアノブを強く握り締める。

「開けてくれ」

どうするべきか逡巡する。

でも――。
このまま、柊ちゃんを無視していても、いつまでも終わらないのではないか。私の気持ちは一つだ。はっきりと言うべきことを伝えるべきだ。

それと、もう一つの考えが浮かぶ。

難しいかもしれない。こんなことをお願いしたら、柊ちゃんがどう思うか――。

でも、真実は真実なのだ。心を決める。

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