囚われのシンデレラ【完結】
「……俺が、おまえのこと、ずっと好きだったと言っても? あずさの心は少しも動かない?」
弱々しくなる声が、私の心に追い打ちをかける。
「ずっと言えなかったんだ。あずさとの距離が近すぎて。いまさらどんな顔しておまえに惚れてるなんて言っていいのか、全然分かんなくて。そんな自分を、毎日、後悔して後悔して、どうにもなんなくて。苦しくて……っ」
すべてを振り切るように頭を横に振った。
「このドアを開けたのは、これから西園寺さんが来るから、柊ちゃんに本当のことを言って欲しいとお願いしようと思ったからだよ。でも、それが出来ないならもう私には話すことない。帰って」
「あずさ――」
「帰って!」
その目が見開かれる。
「今日から、柊ちゃんとは幼馴染でもなんでもない。さよなら」
呆然と立ち尽くす柊ちゃんを両手で部屋から追い出し、ドアを閉めた。閉じたドアに背中を預けて硬く目を閉じる。そのまましゃがみ込んだ。
胸が痛い――私がそんなことを思うのは間違っている。
ドアの向こうの、さびれた階段を降りて行く重い足音を聞きながら、顔を両手で覆う。そして、大きく息を吐いて、立ち上がった。
家の中の家電の主電源を切り、自分の身の回りの物をバッグに詰める。時計を見ると、西園寺さんから電話があった時から既に1時間が過ぎていた。渋滞でもしているのだろうか。スマホを手に取ったけれど、運転中かもしれないと思うと電話もメールも躊躇われた。
もう少し、待っていよう。
そう思って20分ほど待ってみたけれど、スマホが鳴ることはなかった。
やっぱり気になって、こちらから電話をしてみることにした。耳に届く呼び出し音に緊張しているとそれが途切れた。
あっ、繋がった――。
「もしもし、今、電話、大丈夫ですか?」
(あ、ああ)
「何かあったのかなって思って……渋滞していますか?」
少しの間の後、西園寺さんの声が返って来た。
(遅くなって悪い。もう着いたから、車で待ってる)
「そうですか。じゃあ、今、行きますね」
通話を切り、バッグを手にした。