囚われのシンデレラ【完結】
ラウンジでの演奏も散々だった。人前で演奏している以上、私情なんて何があろうと関係ない。お金をもらって演奏している人間として失格だ。フォローしてくれたピアノとチェロの二人に申し訳なくて、自分が情けなくて仕方がなかった。
――もう少し、バイト減らせないの?
奏音の言葉が何度もこだまする。
奏音の言っていることが正しいということは分かっている。
でも、音楽を学ぶにはとにかくお金がかかる。
大学の高額な学費だけじゃない。楽器のメンテンナンス代、衣装代、学外でのレッスン代。それに、楽譜も馬鹿にならない。音大で学ぶレベルになると、一冊数千円もする楽譜をいくつも買わなければならない。そのすべてを親に頼ることは出来ない。
音大の友人たちで、アルバイトに多くの時間を割く子は少数だ。裕福な家の子が比較的多いこともある。奏音のように附属の音高から来ている子は特にそうだ。
でも、仕方ない。無理なものは無理なのだ。
Aオケから落ちたという事実が、目の前に立ちはだかる。私にとって、何より苦しい事実だ。
いつもならすぐに切り替えられるのに、全然上手くいかない。
心の中の葛藤を無理矢理に追いやりながら終えたコンビニでのアルバイトを終えた。
いつものように練習室へと向かうおうとする足が、一歩、二歩と進むたびに速度が落ちて行く――。
「――待って」
俯きがちに歩く私を呼び止める声がした。おもむろに振り向くと、そこにはあの人が立っていた。