囚われのシンデレラ【完結】
あずさの置かれた状況を知ってすぐにしたことは、知り合いの医者に会いに行ったことだ。
次にあずさのことについて調べた。驚いたのは、あずさがあの男と結婚していなかったことだ。それどころか、今現在は交際すらしていなかった。
あれから7年だ。過去の傷も痛みももうない。だからこそ純粋にあずさを助けられる。そう思った。
金銭的な援助を自然な形であずさが受けるには、一番近い存在になること。そのためには、あの時考えた『結婚』という形が一番いいと思った。あずさに恋人がいないと知れば、その方法もとれる。
ただ。結婚するには理由がいる。7年ぶりに再会しただけの元恋人同士。結婚などあまりに唐突だ。俺にとっての過去があるように、あずさにとっても俺との過去がある。それもただの過去じゃない。あずさの中に俺に対する罪悪感があるはずだ。罪悪感を抱えたままで、そばにいさせたくない。そのためには、この関係に感情を絡ませないことが必要だ。
あずさが俺に負い目を感じないですむためには、
”感情は一切残っていない”
そう知らせることが一番だと思った。昔の男からの好意や親切心などと思われたら、あずさは絶対にこの提案を受け入れない。
母親を助けること。そして、俺にもちゃんとメリットがあるということ。お互いの利害が一致した単なる契約。そうであれば、あずさは俺に申し訳ないなんて思う必要がなくなる。
後になって冷静に考えれば、無理な理屈だと分かる。
でも、必死だったのだ。とにかく早くあずさを助けたかった。目の前で困難な状況に陥るあずさを一人にしたくなかった。
そう思って始めたことなのに、俺ときたらどうだ。
あずさを感じれば感じるほど、心がかき乱される。醜い心が俺を支配しようとする。何の感情もないと伝えようとするあまり、酷い言葉まで吐いてしまう。そんなろくでもない俺に対しても、あずさは真正面から向き合おうとしてくれいる。
それなら俺は、あずさのためにできるだけのことをする――。
その思いだけが、この生活を続ける支えだった。