囚われのシンデレラ【完結】
「……ソコロフのレッスンは大変そうだな」
「それもこれも、西園寺さんのせいですよ! 厳しくやれなんて言うから」
「何事もやるからには厳しい方がいいだろう?」
あずさの力を最大限引き出すレッスンでなければ意味はない。あずさには超一流の音楽家に見てもらいたかった。
7年前、あずさには夢があった。諦めてしまった夢を、また見られるように。
そのためにも無駄な時間を作るわけにはいかない。
何度か顔を合わせたことがあるソコロフに、思い切って頼み込んで本当に良かった。この短期間で、あずさのバイオリンに再び情熱が灯り始めているのが手に取るように分かる。
「……それに、君が思うよりいい音だと思うよ? 7年前とはまた違う、今だからこそ出せる音もあるんじゃないのか?」
「そうかな……。そうだといいなって思うんですけど」
こんな風に日々を過ごして、7年前とは切り離して新たに関係を築くことも出来るかもしれない……。
先ほどの細田さんの言葉を思い出す。
あずさの少しそらし気味の眼差し。俺を見上げる時の目――。
もしかして、俺と生活をしていく中で、あずさにも俺と同じ気持ちが芽生え始めている?
「……西園寺さん?」
「い、いや。何でもない。じゃあ、しっかり頑張れよ」
そんなことを考えてしまった自分に呆れる。
俺との生活は辛いと言われたばかりだと言うのに。
俺自身も感じていた、あずさの辛そうな姿を思い出せ――。
それもこれも、俺を惑わすようなことを言った細田さんのせいだ。
いつまで自分の忍耐が持つのか。
それは日を追うごとに薄れて、とてつもない努力を強いられている。