囚われのシンデレラ【完結】
それからすぐ、あずさの母親が無事に退院することが出来た。
大石先生からも、体調面での太鼓判を押してもらっている。
これからは、定期的な検診と無理をしないこと。それさえ守れば、日常生活を送れると言われた。
本当に良かった。あずさの笑顔を見れば、改めて心からそう思う。あずさの母親を助けることができただけでも、この結婚に意味はあったと思える気がする。
「――本当にありがとう。でも、こんなことまでしてもらって本当にいいの? ここ、大変な費用がかかっているんじゃない?」
契約したシニア向けマンションに、3人でやって来た。もう、この日から住めるようになっている。
最初は、甘えるわけには行かないと言ったあずさの母親を説得するのは大変だった。あずさの安心のためだと言って、何とか納得してもらった。
「いえ。ご心配なさらないでください。それ以上に稼いでいますから」
俺がそう答えると、驚いたような顔をした。
「西園寺さんでも、そんな冗談みたいなこと言うの?」
その横で、あずさも笑っている。
「事実ですから。それにあずさのお母さんなら、俺にとっても大切な家族だ。費用のことなど気にせず、無理をしないでお元気でいていただけることが何よりですからね」
「そうよ。もう、無理は禁物だからね」
あずさがそう言うと、「はいはい」と答えていた。
ここは、仕組みとしては分譲マンションと同じだ。ただシニア専用だから普通のマンションよりも設備が整っていて、サービスが手厚い。何より医療体制が整っている。
それに、分譲マンションだから介護施設とは違って資産になる。将来、あずさがもし母親と一緒に住みたいと思えばそれも可能だ。その時のためにも、2LDKの間取りの部屋を選んだ。
「そうだ、西園寺さん。私もこうしてやっと退院できた。西園寺さんのご両親にご挨拶にうかがわないとって、ずっと気になっていたのよ」
「ああ……」
そう言って来るのも無理はない。
でも、両親に会わせるつもりはない。会わせたところで不快にさせるだけだ。
それに――その意味も、いずれなくなる。
「そうですね。ただ、今は長期プロジェクトが動いているせいで父が多忙なもので。それが落ち着きましたら、席を設けさせていただきます」
「そう? それなら仕方ないわね。ご迷惑になっても申し訳ないし」
「そうよ。あちらのご都合もあるし」
あずさも助け舟を出した。