囚われのシンデレラ【完結】

「あっ、そうだ。西園寺さんに相談したいことがあるんです」
「相談?」

今朝、木藤さんから電話があったのだ。

「急遽、木藤さんのリサイタルにピンチヒッターで出演することを頼まれたのですが、出ても大丈夫でしょうか?」

西園寺さんは社会的に立場のある人で。私は一応妻だ。西園寺さんに相談してみると木藤さんには答えていた。

「……それ、本当か?」

西園寺さんの表情が変わる。

「はい。木藤さんと一緒に演奏するはずだった人が、急に出られなくなってしまったらしくて。2曲だけなんですが、デュオの曲のセカンドバイオリンを担当することになるみたいです」

私では無理だと断ったのだけれど、急なことで他に頼む人がいないからと木藤さんが言って来たのだ。

「そんなの、迷う必要ない。出ていいに決まっている。と言うか、絶対にやれ」
「……わ、わかりました。木藤さんにそう返事をします」

西園寺さんの勢いに気圧されつつ、頷いた。

「やるからには、とにかく足を引っ張らないように頑張ります」
「それ、いつあるんだ?」
「西園寺さん、まさか、来るんですか……?」
「行くに決まっているだろ。何があったって行くさ。そうか。あずさが……それは楽しみだな」

想像以上に西園寺さんが嬉しそうで、びっくりする。

「あ、あの、でも、さっきも言った通り私は少し出るだけの助っ人ですからっ」

過度な期待はさせられない。

「そんなこと関係ない。舞台で弾くあずさをまた見られるんだな。そうか……」

あまりにしみじみと言うもんだから、何とも言えない気持ちになる。

「急に楽しみが出来て、仕事も頑張れそうだ。その仕事のことで、こっちも話がある。明後日から海外出張で1週間ほど家をあける。今度建設予定のホテルの現場に行くんだ」

海外出張――。

「そうなんですか。だから、最近忙しそうにしていたんですね」

疲れている原因はそれだろうか。

「そこで、頼みがある」

西園寺さんが表情を少し険しくして言った。

「俺の留守の間、外出する時は常に細田さんの車に乗ってほしいんだ」
「……え?」

それは、どういうことだろう。
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